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童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
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    命の恩カエル(イソップ物語より)

    とある街の外れ。

     

    そこには大きな池があり、1匹のカエルが住んでいました。

     

    その日は朝から雨が降っていましたが、

    午後になってあがり、お日様が顔をだしました。

     

    池に住むカエルは、雨をしのいでいた大きな葉っぱの下から

    外に出ました。

     

    木々や地面の草についた水滴が、お日様の光を浴びて

    キラキラと光っています。

     

    カエルは眩しくて目を細めました。

     

    「キレイな景色だなぁ〜」

     

    カエルが、キラキラした景色を、ボーっと、ながめていると、

    街道のほうを、1匹のカエルが、ぴょんぴょん、

    と、はねて移動しているのが見えました。

     

    「あれぇ、見かけない顔だなぁ」

     

    移動しているカエルは、街道沿いにある水たまりに入ると、

    はねるのをやめました。

     

    「さっきの雨でできた水たまりに入って、

     なにしてるんだろぉ」

     

    移動して来たカエルは、水たまりに止まったまま

    動き出しません。

     

    池のカエルは気になって、ぴょんぴょんとはねて、

    水たまりの方へ向かいました。

     

    そして、こんにちは、と挨拶をしてから訪ねました。

     

    「そんな水たまりでなにやっているの?」

     

    水たまりにいるカエルは、笑顔で池のカエルに言いました。

     

    「なんだか、居心地がいいから、ここに住んじゃおうかなぁ、

     って、思ってたところです」

     

    池のカエルはビックリして言いました。

     

    「住んじゃうって、そこはさっきの雨でできた水たまりだよ、

     すぐに水がなくなっちゃうし、車が通ったら、

     ひかれちゃうかもしれないよ!」

     

    「えー! ただの水たまり!!

     居心地よかったのにガッカリです」

     

    水たまりのカエルはショボンとしてしまいました。

     

    「気を落とすことは無いよ!

     ボクが住んでる池に来るとイイよ!」

     

    池のカエルは元気に言いました。

     

    「え、一緒に住んでもイイんですか?」

     

    「うん、ボク1匹じゃ、広くて困ってたんだ、

     ちょうど良かったよ」

     

    「そうなんですかぁ、それなら、お言葉に甘えちゃおうっかな」

     

    と、水たまりのカエルは、ぴょーん、とはねて、

    外に出ました。

     

    2匹は、ぴょんぴょんと、池に向かってはねました。

     

    池のカエルが先を行き、水たまりのカエルがあとに続きます。

     

    ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょん、

     

    と、しばらく進んだとき、

     

    “ガシャガシャガシャ”

     

    後ろの方で大きな音が聞えててきました。

     

    2匹は跳ねるのをやめて振り返りました。

     

    それは街道を走る馬車の音でした。

     

    馬車は、勢いよく走ってくると、先ほどいた水たまりの上を

     

    “バシャ―ン!!”

     

    と水しぶきを上げながら通り過ぎていきました。

     

    2匹のカエルはビックリしました。

     

    特に、水たまりのカエルはさっきまで自分がいた、

    まさにその真上を馬車が通っていったので、

    驚きのあまり、ぶるぶる、っと体が震えました。

     

    水たまりのカエルは、池のカエルに向かって言いました。

     

    「ありがとうございます。あのままいたら、わたしは今頃、

     死んでいたかもしれません。あなたはわたしの命の恩人です」

     

    「いやぁ、そんな大げさなぁ」

     

    池のカエルは照れながらそう言いました。

     

    その後2匹は、また、ぴょんぴょんとはねて、池にやってきました。

     

    「うわーぁ、広い!」

     

    水たまりのカエルは目を輝かせて感激しました。

     

    「本当に、わたしも住んでもイイんですか」

     

    「もちろん、一緒に住みましょう」

     

    「夢のようです! なにからなにまで、本当にありがとう」

     

    水たまりのカエルが丁寧にお礼を言うと、

    池のカエルは照れ笑いを浮かべました。

     

    それはら2匹は仲良く暮らしました。

     

     

    そんなある日のことです。

     

    昨日まで2日間雨が続いていました。

     

    2匹のカエルは、それぞれ、大きな葉っぱの下で、

    雨をしのいで過ごしていました。

     

    今朝も雨が降っていましたが、段々、雨が弱まり、

    やっと葉っぱの外に出れるようになりました。

     

    「いやぁ、ずっと降ってたね」

     

    池のカエルが水たまりのカエルに話しかけました。

     

    「はい、ずっと葉っぱの下にいたので、たいくつでした」

     

    「雨がやんだから、もうちょっとで、お日様が出てくるよ。

     そしたらね、この辺、すごくキレイな景色になるんだよ」

     

    「えっ、本当ですか! 楽しみです」

     

    と、2匹は雨上がりの気持ちよさも手伝って、

    のん気に話しをしていました。

     

    その時、どこからとともなく、音が聞こえてきました。

     

    “ドドドドドドドドドド”

     

    「なんですか? この音」

     

    水たまりのカエルが聞きましたが、池のカエルは首をひねって、

     

    「なんだろう? 聞いたことない音だ」

     

    “ドドドドドドドドドドドドドーーー”

     

    だんだん音が大きくなって来ます。

     

    2匹は、音に耳を傾けて、身を構えていると、

     

    “ザザザザザザザザザーーーッ!!!!

     

    突然、大量の水が池に流れ込んできました。

     

    「うわぁ!」

     

    2匹はあっという間に、水にのまれてしまいました。

     

    水たまりのカエルは、たまたま地面からのびている葉っぱに

    しがみつくことができ、陸に上がることができました。

     

    すぐに池のカエルを探しました。

     

    陸の上から周りを見渡すと、

    池の中はどこからか流れてきた水と木の枝や草で

    めちゃくちゃになっていました。

     

    キョロキョロと見ていると、少し進んだところに、

    池のカエルがいました。

     

    めちゃくちゃに流れている池の底の方から、木の枝が伸びていて、

    池のカエルがしがみついていました。

     

    水たまりのカエルは近くまで行くと、

    池に落ちないように足を踏ん張り、

    片方の前足を大きく伸ばして、大声を上げました。

     

    「わたしの手に捕まって!!

     

    木の枝にしがみついていた池のカエルはその声に気が付き、

    前足を思いっきり伸ばしてきました。

     

    あと少しで、2匹の前足は届きそうです。

     

    その時、池のカエルがバランスを崩し、

    めちゃくちゃに流れる、池に体が取られました。

     

    池のカエルは、なんとか踏ん張り、枝にしがみついて、

    態勢を整えました。

     

    「だいじょーぶ?」

     

    「うん!」

     

    2匹の間には、木の枝や草が、めちゃくちゃに流れています。

     

    水たまりのカエルは、もう一度足を踏ん張り直して、

    前足を伸ばしました。

     

    池のカエルも思いっきり前足を伸ばします。

     

    今度は、2匹の足はがっちりと触れ合いました。

     

    水たまりのカエルは全身に力を入れて、

    おもっきり引っぱります。

     

    池のカエルは、枝を離し、

    めちゃくちゃに流れている池を飛び込みました。

     

    水たまりのカエルは前足をギュッと握りしめ、

    力を込めて、陸に倒れ込むように引っ張り上げました。

     

    池のカエルは勢いよく陸に上がることができました。

     

    ぜーぇ、ぜーぇ、

     

    2匹は陸の上で並び、苦しそうに息をしています。

     

    ぜーぇ、ぜーぇ、

     

    しばらくして息が整ってくると、池のカエルが言いました。

     

    「ありがとう、助かったよ」

     

    「よかった」

     

    と、水たまりのカエルは笑顔で言ったあと、

     

    「やっと、恩返しができました」

     

    「恩返し?」

     

    池のカエルがキョトン、とした表情をすると、

    水たまりのカエルは、

     

    「わたしはあなたに、命を助けられていますから」

     

    笑顔でそう言う水たまりのカエルに、池のカエルは、

     

    「あなたと、一緒に住んで、本当によかった」

     

    「わたしもです!」

     

    池は、まだまだ激しくめちゃくちゃに流れていましたが、

    空は明るくなり、やがてお日様が顔を出し、辺りを照らしました。

     

    「キレーイ!!」

     

    2匹は、自分たちが生き延びたことを実感しながら、

    キラキラした景色を、しばらくながめていました。

     

    おしまい。

     

     

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    雪だるま
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      ミーコの気まぐれ(日本の昔話より)

      「うちの親は、食事のマナーにうるさいのよぉ」

       

      車を運転している若い女性が言いました。

       

      「そうなのかぁ、なんだか胃が痛くなってきた」

       

      緊張したおもむきで助手席に座る男性は、正面をうつろな目で見ながら、

      お腹の辺りを擦りました。

       

      「しっかりしてね、あたしたちの結婚がかかってるんだからね」

       

      「うん、分かってる、ちゃんと挨拶しないとね」

       

      「そう、でも、その前に食事だね、

       とにかく食べる順番とタイミングが大事よ」

       

      「テーブルマナーは、学校で習ったんだけどなぁ」

       

      「うちのは独特なのよねぇ、わたしも小さなころから、

       ずっと注意されててね、決まった順番がある訳じゃないのよ、

       タイミングなのよ」

       

      「タイミングねぇ」

       

      「それと食事の流れなんかで注意されちゃうんだよ〜、

       わたしからの合図、ちゃんと覚えてる?」

       

      「大丈夫」

       

      と、男性はズボンの横から出ているひもを手にして、

       

      「ひもをツン、と君が一回引っ張ったら、おつゆを飲み、

       ツンツン、と二回のときは、ご飯を一口食べ、

       ツンツンツン、だったら、こばちを手に取り……」

       

      「違う違う、ツンツンツンは、おかずを食べる、

       たぶん焼き魚が出るから、キレイに食べてね」

       

      「あっ、そうか、ツンツンツンで焼き魚ね、

       で、こばちは何だっけ?」

       

      「こばちは、ひもじゃなくて指でツンよ」

       

      「そうだ、こばちは、指と……ちゃんとできるかなぁ」

       

      「だいじょーぶ、合図するのは最初だけで、

       あとは慣れると思うからぁ、きっとうまくやれるよぉ」

       

      「慣れねぇ」

       

      男性は不安な表情のまま、やがて、車は女性の実家に到着しました。

       

      女性も実家に帰るのは何カ月かぶりです。

       

      二人は出迎えてくれた両親に挨拶して、リビングに通されました。

       

      リビング通されるやいなや女性は、

       

      「ミーコ、久しぶり!」

       

      リビングのソファで寝ていた白に黒のぶちがついたミーコという

      ネコに抱き付きました。

       

      ヨシヨシと首や額の辺りを擦ると、

      ミーコは目を閉じて気持ちよさそうにしています。

       

      リビングにあるテーブルにはすでに料理が置かれていて、

      母親に促された席に男性は座りました。

       

      男性は車を降りてから、ずっと緊張していて、

      椅子に座っても体はガチガチです。

       

      「それでは、とりあえず乾杯しようか」

       

      そういう父親に、男性は立ち上がり、

       

      「私がつぎます」

       

      と、ガチガチと小刻みに震える手で、ビール瓶を持ちました。

       

      「これは、すまない」

       

      と、父親も少しぎこちない口調で言ったので、

       

      ミーコから離れ、テーブルに移動してきた女性は、

       

      「もう、みんなそんなに緊張しないで」

       

      と笑顔で言いながら、男性のすぐ横の椅子に座りました。

       

      「おう、そっ、そうか」

       

      父親は照れくさそうに笑いました。

       

      そして、みんなのコップに飲み物が注がれると、

      乾杯して食事会が始まりました。

       

      さて、と男性が箸をとると、ツンツンと紐が引っ張られました。

       

      (ツンツン、だから、まずはおつゆを飲めばいいんだな)

       

      男性は、透明なおつゆにワカメとなんだか分からない、

      白いものが入ったお椀を両手で持ち上げて、

      なるべく音を立てないように一口飲みました。

       

      「はぁ、美味しいです」

       

      男性が正面に座っている母親に笑顔を向けて言うと、

       

      「まぁ、それは良かった、口に合うか心配してたのよ」

       

      と、母親が嬉しそうに言いました。

       

      すると、すぐに父親が、

       

      「うちのお母さんの料理は、絶品だぞ!」

       

      と、ちょっと大きな声で言いました。

       

      「イヤですよ、お父さんたらぁ」

       

      ハハハハハハァ、とみんなで笑い、少し場がなごみました。

       

      ツンツンツン

       

      と、紐が引っ張られました。

       

      (よし、おかずだな、鮭の切り身、上手に食べるぞ)

       

      男性は無難に鮭の身をほぐし、口の中に入れました。

       

      (えーと、つぎは───)

       

      こうして男性は女性の合図にしっかり応え、

      順調に、食事は進んで行きました。

       

      しばらくすると、だいぶ慣れて来たのか、男性は合図が無くても

      ちゃんとした順番とタイミングで食べることができるようになりました。

       

      両親ともごく普通に笑顔交じりで会話をしていたので、

      女性も安心して、合図を出さずに楽しく食事をしていました。

       

      女性が合図をしなくなったので、ズボンの横から出ている紐は、

      椅子から垂れ下ってしまいました。

       

      そこに、ソファーからミーコがトボトボと歩いてきました。

       

      そして、垂れ下っている紐の前で止まり、ジーっ、見つめています。

       

      ミーコはおもむろに前足を上げ、紐を引っ張りました。

       

      ツン

       

      (あ、)

       

      ご飯を食べようとしていた男性は

       

      (ここは、おつゆか)

       

      と、慌てておつゆを飲みました。

       

      ツンツンツン

       

      (ん、今度はおかずか)

       

      男性は、おつゆのお椀を置くと、鮭に手を伸ばしました。

       

      すると、

       

      ツンツン

       

      (えっ、合図が早いな、ご飯か)

       

      と、鮭をごはんの上にのせました。

       

      ツンツン

       

      (わかったわかった、ご飯だな、ご飯)

       

      男性は、ご飯をがつがつと食べました。

       

      ツン

       

      (え、おつゆ)

       

      男性はすぐにお椀をとりおつゆを一口飲みました。

       

      ツンツン

       

      男性は、ご飯を食べ、

       

      ツンツンツン

       

      鮭に手を伸ばし、

       

      ツン

       

      すぐにおつゆを飲みました。

       

      男性のその慌しい食べ方に、

      三人とも呆然と眺めていました。

       

      女性は、ふと、両親の見ました。

       

      とても驚いているようすです。

       

      マズイ、と思い、何してるのよ、と男性を肘で突っつきました。

       

      (えっ、ここでこばちか!)

       

      男性は指で突かれたと勘違いして、こばちに手を伸ばしました。

       

      すると、すぐさま、

       

      ツンツン

       

      と、ご飯の合図を受けたので、片方の手にこばち、

      片方の手にご飯という状態になってしまいました。

       

      「はぁー」

       

      と、女性は思わず頭を抱えてうなだれました。

       

      うなだれている女性を横目で見た男性は、

       

      (あ、なんか俺、失敗したか)

       

      と、思い、すぐに両親の顔を見ました。

       

      両親は呆気にとられたような表情で、男性を見ていました。

       

      男性は、静かに、こばちとご飯を置き、愛想笑いを浮かべて、

       

      「あははははぁ、とっても美味しくて……」

       

      と、口をもぐもぐしながら言いました。

       

      少し、重たい空気がテーブルの上を流れました。

       

      「あ、ぁ…………」

       

      と、男性が冷汗をかいていると、

       

      「いや、実に見事な喰いっぷりだ!」

       

      と、父親が言いました。

       

      男性と女性は驚いた表情で父親を見ました。

       

      「男の人は、その位でないといけないな、なぁ母さん」

       

      「そうですね、そんなに食べてくれると、作りがいがあります」

       

      と、母親は笑顔で言いました。

       

      「え、あっ、あー」

       

      と、どうしていいのか分からない男性の横で女性が言いました。

       

      「えっ、お父さん、お母さんいつも食事の順番とかうるさいのに、

       どうしたの?」

       

      父親は笑顔で、

       

      「あぁそれは、おまえが子どものころ、落ち着きなく、

       アッチコッチ手を出して好き勝手に食べるから、

       落ち着けるために厳しくしたつもりだが、それがどうした?」

       

      「じゃぁ、他の人はいいの?」

       

      「いいも、なにも、おまえだって大人になったんだから、

       好きに食べればいいさ」

       

      「えーっ」

       

      女性はびっくりした声を上げてから、

       

      「なーんだーぁ!」

       

      と、気の抜けた声を出して、椅子の背もたれにどっと寄りかかりました。

       

      「なんだとは、なんだ」

       

      父親が困惑していると、

       

      「ふーぅ」

       

      と息を吐いた男性も、手をテーブルについて、頭を下げてうなだれました。

       

      「二人とも、どうしたの?」

       

      不思議そうな母親に、女性は理由を話しました。

       

      話しを聞いて、両親は大笑いしました。

       

      「変な気をつかわせて、悪かったな」

       

      と、父親は男性に謝りました。

       

      「いいえ、とんでもありません、いや、逆に緊張がとけて良かったです」

       

      「おわびのしるしだ、まっ、飲んで」

       

      と、父親はビール瓶を男性に向けました。

       

      しかし、男性は、それを手て停止し、おもむろに姿勢を正して言いました。

       

      「ところで、お父さん」

       

      「どうした、急に」

       

      父親は、ビール瓶をテーブルに置きました。

       

      男性は、隣にいる女性を見ました。

       

      女性は、男性の表情を見て、軽くうなずき、姿勢を正し正面を見ました。

       

      男性は、フーッ、と息を吐き、静かに言いました。

       

      「娘さんと、結婚させてください!」

       

      その言葉を聞いて、両親は背筋を伸ばして二人を交互に眺めました。

       

      和やかだったリビングは、一瞬の緊張に包まれています。

       

       

      ───そんなことにはお構いなく、ソファーに戻ったミーコは、

      前足を思いっきりのばしてから、退屈そうに丸くなって眠りました。

       

       

      おしまい。

       

       

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        神さまに祈る前に(イソップ物語より)

        昔々のお話です。

         

        年老いた村人が家に帰るために歩いていると、

        街はずれの舗装されていない道で、

        馬車を止めている若い男性を見かけました。

         

        村人は村の人間なら全員知っていますが、男性の顔は

        見たことがありませんでした。

         

        男性は馬車の横でひざを地面につけて、両手を胸の前で組み、

        頭を少し下げ、目をつむり、何やら“もごもご”と

        ひとり言を言っていました。

         

        年老いた村人は、男性に声をかけました。

         

        「若いの、どうなさった?」

         

        男性は目を開けると、手を組んだまま立ち上がり、

        村人の方を向いて言いました。

         

        「困ったことがあったもんですから、神さまに祈りをささげていました」

         

        「困ったこと? 祈り?」

         

        村人は、小首を傾げながら「なにがあったのじゃ」とたずねました。

         

        「ええ、それが馬車の荷車が深い溝にはまってしまって、

         動かなくなってしまったのです」

         

        「え!」

         

        村人はちょっと驚きました。

         

        馬車を見ると、馬の後ろに荷物を積んだ荷車が繋がれていて、

        両側に一輪ずつある車輪の片方が、確かに溝にはまっていました。

         

        しかし村人はそのことに驚いたのではありません。

         

        村人は男性に訪ねました。

         

        「あなたは、神に祈っていたと言ったが、

         なにを祈っていたのじゃ?」

         

        男性は、なんの躊躇もなく言いました。

         

        「はい、馬車を動くようにしてくださいと」

         

        男性の答えに村人は少し言葉を失いました。

         

        そして、我に返って、

         

        「そ、そんなこと、神さまに祈らんでもいいでしょう」

         

        と、半ばあきれたように言いました。

         

        「はぁ、でもぉ、こうなっては私は神に祈るしかありません……」

         

        男性は溝にはまっている車輪に目を向けています。

         

        村人はあきれたように、無言で荷車の後ろへ行きました。

         

        「わしが荷車を押すから、合図をしたら馬を動かしてくれ」

         

        「え、あ、はい」

         

        男性の気の抜けた返事には構わず、村人は、

         

        「せーのっ!」

         

        と、掛け声を上げると同時に、荷馬車を思いっきり押しました。

         

        男性は慌てて、馬に鞭を入れました。

         

        「ウムムムムムムム」

         

        村人は腕で荷車を持ち上げるように押し、足を踏ん張り力を入れました。

         

        鞭を入れられた馬も一生懸命、前へ進もうとしています。

         

        やがて荷馬車の車輪が傾きだしました。

         

        「フムムムムムム」

         

        村人は体を荷車に預けるようにくっつけ、

        さらに力を込めて荷車を押しました。

         

        「ムムムムムムム、ハーッ!」

         

        と、村人の叫び声と共に全身に力をいれると、

        荷車の車輪は動き出し、溝から見事に抜け出しました。

         

        前へ進む荷車の後ろ姿を眺めながら、

        村人は“フゥーッ”っと大きく息を吐きました。

         

        男性は慌てて馬を止め、村人の方へやって来ました。

         

        「助かりました。ありがとうございます!」

         

        男性は目をキラキラさせて村人に感謝の言葉を投げかけました。

         

        「なんの、なんの」

         

        と、村人は言ってから、腰に手を当てて、

        少し背中をそらしました。

         

        そして、肩を軽く回した後、よかった、よかった、と喜んでいる

        男性に言いました。

         

        「車輪がはまったあと、荷車を後ろから押そうとはしなかったのかい?」

         

        男性はすぐに「ハイ」と返事をしました。

         

        「押しもせず、神さまに祈ったの?」

         

        村人がそう言うと、男性はすぐに「ハイ」と答えました。

         

        村人は(やれやれ)と頭を静かに横に振りました。

         

        男性は“ハッ!”となにか気づいたような顔をして、

        村人に近寄り言いました。

         

        「もしかして、あなたが神様ですか!

         助けに来てくれたのですか!」

         

        村人は慌てて、

         

        「わしは神さまじゃないよ、通りすがりのもんじゃ、

         ただ、車輪を溝から出すのに慣れているだけじゃ」

         

        と、言いましたが内心

         

        (こんなことで頼りにされたんじゃ、神さまも大変じゃなぁ……)

         

        と思いました。

         

        「どちらにしろ、あなたは恩人です。

         ありがとうございます」

         

        男性は村人の方を向いて、手を組み、頭を下げました。

         

        「おいおい、勘弁してくれよ」

         

        男性はさんざんお礼をしながら、馬を引いて去っていきました。

         

        村人は、良いことをしたような、からかわれているような、

        なんだか複雑な思いをしながら、若者を見送りました。

         

        “フーッ”

         

        そして、家に向かって歩き始めました。

         

         

        おしまい。

         

         

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        雪だるま
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          美味しいエサと枯草(イソップ物語より)

          むかしむかし、ある家に2頭の馬が飼われていました。

           

          馬小屋に隣同士に並んでいた馬のうち、

          1頭の馬には、いつも美味しいエサが与えられ、

          もう1頭には枯草がエサとして与えられていました。

           

          1頭の馬が隣の馬に言いました。

           

          「君は、そんな美味しくもない枯草ばかり食べていて、

           辛くないのかい?」

           

          「うん、大丈夫。それより君は、美味しいエサを毎日食べてるけど、

           イザ戦争になったら、戦いに行かなきゃならないんだよね。

           その方が辛くない?」

           

          「辛くないよ」

           

          「でも、戦争に行って、帰って来なかった馬はいっぱいいるよ」

           

          「うん、知ってる。でも戦争なんてそう頻繁に起こらないけど、

           食事は毎日のことだからね。いくら戦争に行かなくて済むからって

           君のように枯草ばかり食べさせられるのはゴメンさ」

           

          「そっか、確かに、いつ来るか分からない戦争のことを心配するより、

           毎日美味しいものを食べた方が、幸せかも知れないね」

           

          「そうだよ、その方が幸せだよ」

           

          美味しそうなエサを食べながら1頭の馬は得意げにそう言いました。

           

          すると、枯草を食べている馬は、

           

          「でも、ボクは戦争が無くても、戦う練習が苦手だから、

           のんびりと農作業を手伝っている方がいいよ」

           

          「そうか、君は農作業が好きなんだね。ボクは農作業が苦手だから、

           戦う練習の方がイイ。なによりおもいっきり走れるしね」

           

          「そうだったね、君は走るの好きだもんね」

           

          そんな会話をしながら、2頭は仲良くエサを食べていました。

           

           

          そして、しばらくの時が過ぎました。

           

          2頭はそれぞれ戦いの練習をしたり、農作業を手伝っていました。

           

          ある日のこと、どうやら人間たちは戦争を始めたらしく、

          いつも美味しいエサを食べていた馬は鉄の鎧を着させられました。

           

          「まさか、本当に戦争になるとは思わなかったね」

           

          毎日、枯草ばかり食べていた馬が言いました。

           

          鉄の鎧を着せられた馬は、

           

          「どうやら今日出撃のようだ」

           

          「そっか、じゃぁ、しばらくは並んで食事することはできないね」

           

          「うん、でも、戻ってきたら、また食事しようね」

           

          「そうだね、そうしよう、きっと戻って来てね」

           

          「あぁ、きっと戻ってくるさっ」

           

          と、言ったあと、鎧をつけた馬は、人間に引っ張られ、

          戦場へと旅立っていきました。

           

          1頭だけ残された馬は、隣に誰もいない馬小屋で、

          少しさみしく枯草を食べました。

           

          そして毎日、農作業の手伝いをする変わり映えのない

          日常を過ごしていました。

           

          そんなある日のこと。

           

          農作業を終えて枯草を食べていたときに、飼い主が近づいてきました。

           

          なんだろうと思い、馬は顔を上げると、飼い主が話し始めました。

           

          「おまえは農業用の馬だけど、馬が足らないというのでな、

           かんべんしてくれよ」

           

          と言うと同時に、馬に鎧をつけ始めたのです。

           

          突然、鎧を着させられたので馬はビックリしました。

           

          首や背中に、ずっしりと重たい鎧が次々と乗せられます。

           

          馬は今まで麦や藁などいろいろ担いできましたが、

          こんなに重い物を担いだのは初めてでした。

           

          そして鎧を乗せられたあと、

          歩くように促されたので、足を前に出しました。

           

          なんとか歩けましたが、重くてフラフラです。

           

          しばらく歩くと、鎧を身に付けた兵隊さんがいました。

           

          その隣まで歩いて行くと、兵隊さんは背中に飛び乗って来ました。

           

          ズシン、と背中にさらに重い物が加わりました。

           

          馬は耐えきれなくなり、思わず膝から崩れるように

          しゃがみ込んでしまいました。

           

          飼い主は声を上げました。

           

          「やっぱり無理ですよ、こいつは普段から枯草しか食べてないから、

           力が出ないんだ」

           

          「そうか困ったな」

           

          と、兵隊さんは馬から降りてアゴに手を当てて考えました。

           

          「どうだろう、鎧を脱がして、馬だけでもなんとか貸してくれぬか?」

           

          「お国のためなら仕方ありませんが、なるべく無事に返してくださいよ」

           

          と、飼い主は言って馬から鎧を外しました。

           

          鎧を外されて、身が軽くなった馬ですが、

           

          (ボクは戦場に行くのか? それも鎧無しで。

           ボクは美味しいエサも食べていないのに!!)

           

          馬はとても複雑な思いをしました。

           

          そして、兵隊さんが背中に飛び乗ってきて、お腹の辺りを足で

          ポンと叩くので、指示されるがままに歩き出しました。

           

          (いやだ戦場には行きたくない。戦い方もしらないし、

           美味しいエサも食べてないじゃないか!!)

           

          イヤでイヤで泣きそうになった馬でしたが、

          人間には逆らえず、しかたなく戦場に出向いて行きました。

           

           

          それから何週間か時が経ちました。

           

          2頭の馬は無事、ケガもなく戦場から帰って来ました。

           

          そして以前のように2頭並んでエサをもらいました。

           

          相変わらず1頭の馬のエサは美味しそうで、

          もう1頭のエサは枯草でした。

           

          美味しいエサをもらった馬は、エサを食べずに言いました。

           

          「君を戦場で見かけたよ、鎧もつけずに大変だったね」

           

          「うん、戦い方も知らなかったから、

           みんなが戦っているのを後ろから眺めるしかなかったよ」

           

          「でも、食料や水を運んでくれたよね」

           

          「うん、いつ襲われるか、おっかなビックリだったけど、

           戦っている皆のためだと思ってがんばった。

           役に立ったかな?」

           

          「役立ったも何も、君がいなかったら食事もできずに

           戦えなかったよ」

           

          「そっか、役に立てたのなら、よかった」

           

          と、安堵して枯草のエサを食べようとする馬に、

           

          「ちょっと待って」

           

          と、もう1頭の馬は、前足を上手く使って、自分のエサを

          隣の馬のエサの中に入れ、両方のエサを交ぜてしまいました。

           

          枯草を食べようとしていた馬が驚いていると、

           

          「君も美味しいエサを食べる権利があるよ」

           

          「えっ」

           

          「一緒に食べよう」

           

          「うん」

           

          と、2頭は美味しいエサと枯草をまぜ合わせたエサを

          仲よく食べ始めました。

           

          「美味しいね」

           

          「うん、美味しい」

           

          2頭はお互いの顔を見ながら、戦場から帰って、

          またこうやって一緒にエサが食べられていることを

          幸せに思いました。

           

          エサをまぜて仲良く食べる2頭を見て、飼い主は驚き、

          その後は、2頭に同じエサをあげたということです。

           

           

          おしまい。

           

           

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