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週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
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    医者に説法(江戸小話より)

     昔々、悩みを相談するとなんでも解決する和尚がいました。

     

     ある時、町で有名な医者が和尚を訪ねて来ました。

     

    「はて、お医者さま、わしはどこも悪くないが、なにようかな」

     

    「はい、和尚さま、今日は診察ではなく相談に来ました」

     

    「そうですか、では、奥で聞きましょう」

     

     二人はうす暗い寺の板の間で向き合って座りました。

     

     和尚が悩みを聴きましょうと促すと

     

    「いや実は悩みというのはですね」

     

     と、医者は言ってから、少し言い辛そうな仕草をしました。

     

     それを見て和尚は、

     

    「案ずるな、悩みは他言無用じゃ」

     

    「はっ、それでしたら〜」

     

     と、医者は後頭部の辺りに手を当てながら

     

    「実はですね、この間、病人を三人もなくしてしまいましてね」

     

    「なんと、名医と名高いあなたが、病人を三人も」

     

     と、和尚は目を見開いて言ってから「まぁ、なんだな、それはその病人の寿命だったのかもしれないな。どれ、成仏できるようお経をあげてやろう」

     

     数珠を構えた和尚に医者は慌てて「いや、いや、和尚さま、そうじゃないんですよ」

     

    「そうじゃない、じゃぁ、なんじゃ」

     

    「なくしたという言い方が悪かったですね。病人は、三人とも病気が治ってぴんぴんしております」

     

    「なんじゃ、そりゃ良かったじゃないか、なにを悩むことがあるのか」

     

    「病気が治ったことは良かったんですが……」

     

     言いづらそうにしている医者に和尚は「なんだ、はっきり言ったらどうじゃ」

     

    「はぁ」


     と、医者は、力なく返事をしてから言いました。

     

    「患者がいなくなってしまいまして、その……、明日からの生活が、ままならないというありさまでして……」

     

    「ほうほう」

     

     と、和尚は状況が分かったらしく次のように言いました。

     

    「つまり、お医者さまが名医なばっかりに、病人が来てもすぐに病気を治してしまうから、生活できるだけの銭が稼げない、と言うのじゃな」

     

    「さすが和尚、その通りでございます」

     

    「なんとも、切ない悩みじゃのぉ」

     

     和尚は坊主頭を擦りながら言いました。

     

    「はぁ、面目ありません」

     

     医者は後頭部に手を当てて、恥ずかしそうに頭を下げ、「かと言って、病人からいただく銭を上げるのも気が引けまして……」

     

    「ふむふむ」

     

     と、和尚は大きく頷き「分かった」と言ってから続けました。

     

    「それではお医者さま、わしは、治療費を上げずとも、あなたが生活できるような知恵を授ければ良いのじゃな」

     

    「はい、良いお知恵がありましたら、ご教授いただければ幸いです」

     

    「ふむ、まぁ、簡単なことじゃ」

     

    「は、そうですか」

     

    「つまり、あなたは名医だから、生活ができるくらい銭が貯まる前に病人が治ってしまうのじゃな」

     

    「はい」

     

    「名医ならではの悩みじゃ」

     

    「はい」

     

    「他の医者がそれを聞いたら、どう思うだろうな」

     

    「そうですね……」

     

     医者は小首をかしげ考えてから「やっかみますかな」

     

    「そうじゃな、やっかむ者もおるかもしれんな。それ以外はおらぬか」

     

    「そうですねぇ……」

     

     医者は、右手を後頭部に当てながら考えて「羨みますかな」

     

    「そうじゃな、羨むものも出てくるじゃろうなぁ」

     

     と、和尚は言ってから、身を乗り出しました。

     

    「ところで、お医者さま」

     

    「はい、なんでしょう」

     

    「皆がやっかんだり、羨んだりする名医が、あなたの前にいらっしゃったら、あなたはどうしたいと思いますか」

     

    「どうしたい…ですか……」

     

     と、医者は考えました。

     

     そして、

     

     ───はっ!

     

     と、何かひらめいたように、両目を大きく開けました。

     

    「私なら、その名医に教えを乞いたいと思います」

     

     和尚は落ち着いた表情のままで、

     

    「そうじゃろな、そんなに、あっという間に病気を治す医者の技術は、銭をいくら払ったって学びたいものじゃ」

     

    「確かにそうですね。つまり私は、医者の学校を開けばいい、と和尚さまはおっしゃりたいのですな」

     

    「さすがは名医、勘がいい」

     

     和尚は笑顔で言いながら「あなたの技術が伝われば、助かる命も増えるであろう」

     

    「なお良し、ですね」

     

     医者は「ありがとうございました」深々を頭を下げ、喜んで帰って行きました。

     

     和尚は医者を見送ってから、

     

    「なんとも贅沢な悩みじゃのぉ」

     

     と、目を細めて言いました。

     

     

    おしまい

     

    JUGEMテーマ:仕事の悩み

     

     

    〜この物語について〜

     

    もとのお話はコチラ

     

    福娘童話集(貧乏医者)

    http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/10/30.htm

     

     

    器用貧乏、なんて言葉もありますね。

    なんでもできるけど、1つのことに絞れず、どっちつかずで、なにもものにできないという人。

     

    この物語の医者は、腕が良すぎて患者がすぐに良くなって、病院に来てくれなくなるという悩みを持っていました。

    そこで和尚さんはその技術を教えなさいと説きます。

     

    自分の持っている技術や能力って、自分で使うだけでは、実はもったいないのかもしれませんね。

     

    自分はできるとなまじ思っているから気付かないだけで、他人から見たら羨ましい、教えてもらいたい、と思うほどの能力なのかもしれません。

     

    でも、それは他人の目にさらしてみないと分からないものです。

    器用貧乏の人も、もしかすると、その能力で助かる人がいるかもしれません。

     

    自分の能力を勝手に過小評価しないで、周りの人に披露して、判断をゆだねてみるのもいいのかもしれませんね。

     

    あなたは、なにができますか?

     

    ご意見ご感想を、是非、聞かせてください。

     

     

    今日のhappyポイント♪

    『 実はそれ、スゴイことなのかもよ! 』

     

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