douwadehappy

童話でHappy♪

ハッピーエンドの童話たちが あなたの気分をHappy♪にしちゃいます
週2回(水・土辺りに)更新します

雪だるま
0
    民衆の味方(江戸小話より)

    昔々、盗みを繰り返していた大泥棒いました。

     

    ある時、とても優秀な役人が現れ、とうとう捕まってしまいました。

     

    牢屋に入れられ、明日は処刑される日です。

     

    大泥棒を捕まえた役人が、牢屋の前にやって来て、

    大泥棒に話をしました。

     

    「どうだ、調子は?」

     

    大泥棒は牢屋の中で体を紐で縛られ、

    身動き取れないような状態でしゃがんでいました。

     

    役人の方に目だけを向けた大泥棒は、

     

    「見てのとおりの状態です」

     

    と、静かにと答えました。

     

    役人は、大泥棒の静かな声の中に潜む刃物のような鋭さに

    気付きましたが、動じず、話を続けました。

     

    「最近、ちまたは、おまえの話題で持ち切りだ」

     

    「ほう、それはおめでたいことで」

     

    「おまえが盗みに入った所が大悪人のところばかりだったから、

     『よくぞ盗みに入ってくれた』と庶民は喜んで、

     逆に、おまえが英雄あつかいされてるよ」

     

    「ほう」

     

    と、大泥棒は口の端を上げて不敵な笑みを浮かべると、

     

    「それは、笑える話ですね」

     

    「あぁ、笑える話だ」

     

    役人は表情を変えず、少し声を低くして、

     

    「ところで、おまえは明日には死ぬ。

     死ぬ前に、なにかしておきたいことはないか?」

     

    「そうですねぇ」

     

    と、大泥棒は考えるそぶりを見せてから、

     

    「やりたいことは、全部やりましたので……

     そうだ、辞世(じせい)の歌でもよみましょうか」

     

    「辞世の歌? 随分と高尚な願いだな、まぁいい、

     しっかりと聞いてやろう、どんな歌だ?」

     

    大泥棒は少し笑みを浮かべ

    「うっ、うん」と咳ばらいをしてから言いました。

     

    ♪かかるとき〜 さこそ命の、おしからめ〜

     かねてなき身と〜 思いしらずば〜

     

    目を閉じて聞いていた役人は、

    歌を味わうようにそのままの状態で、

     

    「なるほど、前々から、自分の命はないものと覚悟していたから、

     死を前にしても、命を惜しいとは思わない、と、実に良い詩だ」

     

    大泥棒はニヤリと笑い、

     

    「おほめいただき、ありがとうございます」

     

    と言いました。

     

    役人は、小声で、くりかえし歌を口ずさみました。

     

    「ん?」

     

    何かに気付き、目を見開いて、大泥棒の方に向けました。

     

    「おい、おまえ、今歌ったのはおまえの辞世の歌では無く、

     古い武将の歌ではないか!」

     

    その言葉を聞いて、大泥棒は大声で笑いました。

     

    そして、

     

    「ハハハ、さすがは俺を捕まえた男だ、

     そうさ昔の武将のから盗んだ歌だ!

     どうだ、この歌が俺の最後の盗みだ!

     大泥棒の最後の盗みが歌だなんて、

     洒落てるだろう」

     

    そう言って笑う大泥棒を、役人はあきれたように

    鼻で笑いましたが、心の中では、

     

    (おもしろい奴だ)

     

    と思いながら、その場を離れました。

     

     

    翌日。

     

    大泥棒の処刑の日。

     

    役人は牢屋の鍵を静かに開けました。

     

    「出ろ」

     

    体に巻き付いた紐を引きずりながら、

    大泥棒が牢屋から出てきました。

     

    待機していた二人の若い役人が大泥棒の腕を

    左右からしっかりと掴み、役人を先頭に、

    処刑場へ向かって歩き出しました。

     

    大泥棒は見せしめとして、庶民に公開で処刑されることになっていて

    処刑場は建物の外に作られていました。

     

    暗い留置場の廊下を歩き、役人は処刑場へ通じる扉を開けました。

     

    外の日差しが暗い廊下に差し込んで来て、

    役人は目を細め手をかざしました。

     

    と、それと同時に、大勢の人の声が

    役人の耳に飛び込んできました。

     

    役人は(なにごと?)と、うす目をあけて辺りを見渡しました。

     

    処刑場の周りは、柵で囲まれており、

    中に入って来れないようになっています。

     

    その柵を囲むように、人だかりが幾重にもできていて、

    全ての視線が、こちらに向けられていました。

     

    役人は目を見開き、歩きながらその光景を眺めました。

     

    その群衆がこちらの方を向いてなにか叫んでいます。

     

    「そいつを解放してやれ!」

     

    「その方は俺たちの味方だ!」

     

    「お願い、ゆるしてあげてー!」

     

    と、叫んでいます。

     

    役人は、

     

    (こいつは、こんなに庶民に慕われているのか)

     

    と思い、鼓動が少し早くなる感じがしました。

     

    大泥棒は処刑台に座らせられ、動けないように

    縛り付けられました。

     

    群衆からの叫び声は収まるどころか、

    一段と大きく熱をおびたものになっていました。

     

    役人は大泥棒の目の前に立ち、睨み付けました。

     

    大泥棒も黙って役人を見上げています。

     

    役人は言いました。

     

    「どうだ、この声を聞いた感想は?」

     

    大泥棒は表情を変えずに、

     

    「特に、感想はないね」

     

    「そうか」

     

    役人はそう静かに言うと、二人の若い役人に目配りをしました。

     

    若い役人は腰につけた刀を抜き、大泥棒に向けて構えました。

     

    その瞬間、処刑場の周りからは、一段、いや、さらに二、三段、

    大きな声が上がりました。

     

    その声は、助けを求める声、許しを求める声、役人を罵倒する声。

     

    様々な声が重なり合い、大音響で処刑台に押し迫って来ました。

     

    役人は大勢の訴えを一身で浴びました。

     

    人々のいろんな思いが集まったそれは、

    憎悪の巨大な言霊のように、役人の体に突き刺さって来ます。

     

    若い役人は刀を構え、合図があればいつでも斬りつける

    体勢を整えています。

     

    役人は合図を出すのに躊躇していました。

     

    群衆の叫び声は、大泥棒を逮捕した優秀な役人をも惑わす

    激しい力を持っていました。

     

    役人の目が、処刑台に座っている大泥棒に向けられました。

     

    その目はすぐに柵の向こうの群衆に向けられ、

    次に二人の若い役人に向けられ、

    そしてまた、大泥棒を捉えました。

     

    役人が大泥棒を睨み付けていると、

    ニヤリという笑みが返って来ました。

     

    その表情を見て、役人は少したじろぎました。

     

    こめかみの辺りから、

    大粒の汗が頬伝って流れていきます。

     

    その時です。

     

    大泥棒は大声を張り上げした。

     

    「あー、やかましい! やかましいぃぃぃぃぃぃっ!!!」

     

    その大声は水の波紋が広がるように伝わり、

    まず役人が驚き、二人の役人が驚き、

    そして柵の外側の群衆が驚きました。

     

    処刑場が一瞬の静寂に包まれました。

     

    すぐに大泥棒は叫びました。

     

    「おまえら! なに勘違いしてるんだ?

     俺は、おまえらのために盗んだんじゃねぇ!

     俺が、盗みたくて盗んだまでだ!」

     

    静かに聞いている群衆に、少しの間を置いてから、

    大泥棒は通る声で言いました。

     

    「でもよう、命乞いしてくれてありがとうなぁ」

     

    群衆の中に少し安堵の空気が流れました。

     

    しかし、大泥棒の次の言葉で一転します。

     

    「だがなぁ、勘違いすんなよ、

     生き残れたら、また好きなように泥棒してやる」

     

    そして、その場にいる全員に聞こえるような大きな声で、

     

    「今度は、おまえらの家々に盗みに入ってやる!

     おまえらの身ぐるみ全部盗んでやる!!!

     覚悟しておけぇぇぇぇぇ!!!!!」

     

    その大泥棒の声を聞いて、役人の目に力が入りました。

     

    柵の向こうの群衆は明らかに混乱しているのが、

    役人にも伝わってきました。

     

    二人の若い役人もこちらを見ています。

     

    役人は大泥棒から目が離せなくなり、

    見つめたままでいました。

     

    すると、大泥棒はニヤっと笑い、

     

    「さぁ、殺せ!」

     

    と群衆にも聞こえるような声で言いました。

     

    役人は大泥棒の目を見ながら考えました。

     

    大泥棒が盗みに入ったのは悪人の家ばかり、

    そして、民衆からも慕われている。

     

    しかも、あのような古い歌まで読める頭の良いこいつが、

    本当に、民衆に危害を及ぼす行動をとるのか?

     

    役人は迷いました。

     

    大泥棒は相変わらず不敵な笑みを浮かべて

    こちらを見ています。

     

    役人は考えを纏めようと、目をつむり、

    そして、しばらく考えました。

     

    (いや、違う、逆だ、こいつは悪態をついて、

     この場を納めようとしているだけだ)

     

    役人は、ゆっくりと目を開けると、

    大泥棒の目をしっかりを見据えました。

     

    大泥棒はしっかりとした目で、役人を見ていました。

     

    (よし賭けてみよう)

     

    と心の中でつぶやくと、役人は、大きな声で言いました。

     

    「みんな聞いてくれ!」

     

    ざわついていた柵の向こうの群衆が、徐々に静かになり、

    役人に耳を傾けました。

     

    役人は群衆の方を向いて語りかけるように言いました。

     

    「俺は、こいつに、別の罪を背負わそうと思う」

     

    ざわつく群衆、困惑する二人の若い役人。

     

    役人は続けます。

     

    「コイツは大泥棒かもしれない。

     しかし、俺にはどうしても悪人には思えない。みんなだって、

     さっきまでそう思っていたんじゃないか?」

     

    確かに、と何人かの群衆が頷きました。

     

    「どうやらコイツの望みは、死ぬことのようだ」

     

    役人は群衆を端の方からゆっくりと全体をなめるように、

    目を配ってから、低い声で言いました。

     

    「俺は、コイツの望みを叶えてやるのではなく、

     逆に、生かすことで罪を償ってもらおうと思うが

     みんなはどう思う?」

     

    前代未聞の役人の発言に、群衆は驚いて、

    それぞれがお互いの顔を見ました。

     

    何事か話している群衆もいました。

     

    混乱している群衆もいました。

     

    役人はなにも言わず見渡していました。

     

    群衆はざわざわと混乱しています。

     

    役人の近くにいる、若い役人もお互いの顔を見たり、

    そわそわとしています。

     

    すると、ざわつく群衆のどこからか、

     

    “パチ、パチ”

     

    と、小さな拍手をする音が聞えてきました。

     

    “パチ、パチ、パチ、パチ”

     

    始めは小さな拍手の音でしたが、それは段々と大きくなり、

    やがて、柵を囲む全ての方向からの大きな拍手になりました。

     

    役人は笑顔で頷き、若い二人の役人を見ました。

     

    若い役人も笑顔で拍手をしています。

     

    役人は群衆を見渡しました。

     

    拍手をしているその顔は、

    満面な笑みが浮かんでいました。

     

    役人は群衆に向かって何度も頷いてから、

    若い役人に目配りしました。

     

    二人は大泥棒を処刑台から解いて立ち上がらせました。

     

    大泥棒は驚いた表情をして役人を睨んでいましたが、

    役人は少し目を合わせただけで、視線を外し、

    前に立って、留置場の方へ歩いて行きました。

     

    前代未聞の決断をした役人の背中を、大群衆の拍手が

    後押しするかのように鳴り響いていました。

     

     

    おしまい。

     

     

    JUGEMテーマ:創作童話

     

     

    〜この物語について〜

     

    もとのお話はコチラ

    福娘童話集(大泥棒の辞世)

    http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/03/19.htm

     

     

    今回のお話は、もはや童話じゃない、内容になってますね(^^;;

     

    無理難題を言ってくる人っていますよね。

    先輩とか上司から言われると、本当に困ります。

     

    そんなときは、今回のお話の役人みたいに、

    よーく考えるといいと思います。

     

    そして、自分が納得できる考えに従って行動してみるとイイ。

     

    嫌だなぁ〜、と思うことでも、納得して行動すると、

    意外とストレスがたまらないものです。

     

    ストレスは万病の元です。

     

    嫌だけど、得するからな〜、とイヤイヤ従うと、

    ストレスがたまり、得がどこかへ飛んでいってしまいます。

     

    「自分はこうした方が得! 絶対に得!」

     

    と無理やりにでも納得してから行動すると、

    ちょっぴり楽に行動できるはずです。

     

    今回のお話の役人も最後は大泥棒に賭けてみることにしました。

    それは群衆の願いでもあったし、自分の思いでもあると

    納得して出した答えです。

     

    無理難題に対しては「納得」という盾で受けて立つように

    心掛けみてはいかがでしょう?

     

     

    今日のHappyポイント♪

    『 納得できる考えに従って行動しちゃおう! 』

     

     

    | 無理なことを言われてもHappy♪ | comments(0) | - |









    Happy♪を選んでね
    にほんブログ村 小説ブログ 童話・児童小説へ
    にほんブログ村

    最近更新したお話
    RECENT COMMENTS
    アンケート
    PROFILE
    ☆お買い物♪ お買い物♪☆
    PVアクセスランキング にほんブログ村

    童話でHappy♪のメルマガ登場!!
    メルマガ購読・解除
     

    童話・昔話・おとぎ話の「福娘童話集」

     
    このページの先頭へ